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世界初のGMRヘッド搭載HDDを実用化

GMRヘッドと垂直磁気記録の革新技術でHDDの記録密度・容量が飛躍的に向上。

世界初のGMRヘッド搭載HDDを実用化

HDDの記録密度向上には微細記録ビットの弱い磁界を読み取る高感度ヘッドが必須であり、磁界による大きな磁気抵抗効果変化率(MR比)の実現が重要である。1988(昭和63)年、ヨーロッパにおいて極薄のFeとCrを交互に積層した人工格子で桁違いの抵抗変化率が実現し、大きな注目を集めた。そこで当社は、VTRヘッドなどに取り組んでいた磁気ヘッド開発部隊を集結し、1992(平成4)年からGMR(巨大磁気抵抗効果)ヘッドの研究開発をスタートさせた。高MR比を競う方向性とは一線を画し、磁性層を2層に重ね、多層に比べてMR比は小さめだが線形応答が良好で再生信号検出に適したスピンバルブ構成に着目した。スピンバルブ構成に特有の磁化固着の特殊磁性層としてIrMn合金を、微弱磁界でもMR比が大きい結晶配向制御が可能なCoFe合金を見いだし、基本設計を固めた。

続いて、ヘッド試作実証フェーズに入った。設備が不十分であったが、当時の経営陣からの理解を受け、ステッパーなどの高額設備も導入し、開発を加速した。その結果、1997(平成9)年末には、3Gbit/in2の記録密度で世界初のGMRヘッド搭載HDDをプレスリリースすることができた。その後、パソコンだけでなく、携帯音楽プレーヤー、DVDプレーヤーなど多くの製品にHDDが搭載されるようになった。

これらの開発と並行して、より高い記録密度の達成を目指し、CoCr系金属磁性材料からなる垂直磁気異方性メディアを使った垂直記録の研究も開始された。垂直記録は原理的には優れているものの、従来の面内記録を飛躍的に上回る性能は実証できていなかった。転機は、熱揺らぎによる記録磁化の減衰という物理現象が、面内記録で顕著になり始めた時に訪れた。垂直記録では高密度ほど隣接磁化を強め合い、しかも磁性粒子の体積を大きくできるため、熱揺らぎに耐える余裕が非常に大きいのである。1994(平成6)年頃、熱揺らぎに耐える面内記録用メディアを目指して高磁気異方性CoPtO系磁性材料を開発していたことが、奇しくもこの時に威力を発揮した。この磁性粒子構造は、高い磁気異方性エネルギーを持つCoPt結晶を核に、その周りを酸素濃度の高い非結晶が取り囲むという当社独自のユニークな構成であった。酸化への危惧から金属膜ではタブーだった酸素の導入に踏み切った。その結果、理想的な垂直磁化特性が得られた。高濃度酸素を含む非晶質粒界は粒子間の交換結合を維持し、低温から高温まで磁気特性を維持できる優れた材料となった。1997(平成9)年には、磁性膜の性能を高める工夫の中から、Ruという優れた結晶成長制御の下地材料も発見した。CoPtO系磁性材料、酸化物による粒界分離、それらの成長の土台となるRu下地の組み合わせを発見し、垂直記録メディアとしての磁気特性と記録材料の設計コンセプトが明確になり、研究開発が加速した。2002(平成14)年1月の青梅工場の技術展でPCに実装した垂直記録HDDを世界で初めて報道陣に公開し、大きな反響を得た。2005(平成17)年に133Gbit/in2の世界最高の記録密度と優れた環境耐性を有する垂直記録HDDの製品を世界で初めて出荷し、磁気記録史上初となる記録方式大転換の先陣を切った。

読み取りヘッドの概要
読み取りヘッドの概要

平坦化埋め込みによる磁極分離構造
平坦化埋め込みによる磁極分離構造

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