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世界初のオーバードライブ技術搭載の液晶テレビ

液晶ディスプレイの残像を低減して鮮明化するオーバードライブ技術は、
世界中の液晶テレビに採用された。

世界初のオーバードライブ技術搭載の液晶テレビ
写真は量産された2003年製

液晶テレビは、今や世界のテレビ市場の主役となっている。その実用化においては、画質を大幅に向上させた液晶用オーバードライブ技術の貢献が非常に大きい。現在、ほとんどすべての液晶テレビにこの技術が搭載され新たな市場を創造した。

1988(昭和63)年、総合研究所(現:研究開発センター)に材料、デバイス、回路、システムすべての専門部隊を集めた壁掛けテレビ開発プロジェクトが発足し、液晶テレビ開発に着手した。1980年代後半になり、OA用の液晶ディスプレイがようやく世の中に出回り始めたころである。オーバードライブ技術とは、画像の変化を強調する液晶用映像処理技術である。従来、輝度がステップ状に変化する動画像が表示されると、液晶の応答速度が遅いため、輝度の急峻な変化に追従できず、被写体が動いた後方の残像のために画像がぼやける。この残像を相殺するように事前にその変化を強調(オーバードライブ)するのである。当時、液晶の残像の原因は最も暗い輝度と最も明るい輝度の2値の切り替えの応答速度が遅いことにあり、輝度の変化量が少ない中間調の切り替え応答速度は問題ではないと考えられていた。

開発担当者はオーバードライブのアイデアを以前から持っていたが、液晶を駆動するドライバICの最大の電圧は決まっており、最も暗い輝度と最も明るい輝度の2値の切り替えをオーバードライブしようとすると電圧の上限値を超えてしまう。上限を超える電圧ではオーバードライブはできないので、残像の解消には液晶材料自体を高速化するしかない、と考えていた。しかし、あるとき試しにすべての階調レベルで応答特性を精密に測定してみると、中間調の応答速度の方が遅く、かつ、とくに中間調に、液晶が動くことで発生する容量変化が大きく、それが残像を発生させるという、いままでの常識を覆す結果が得られた。つまり、液晶の残像の大きな要因は、中間調の切り替えの遅さによるものだったのである。「中間調であればオーバードライブを適用できる!」。早速、この技術を用いて液晶テレビを試作し、1990(平成2)年のエレクトロニクスショー(現:シーテックジャパン)や1991(平成3)年の米国CES(Consumer ElectronicsShow)に出展した。すると、残像の少ない高画質の映像に対し、多くの来場者が「これが液晶なのか?」と驚いた。また、1992(平成4)年に技術内容を公表した際には、新聞にオーバードライブ技術による画質向上効果は「ブラウン管に匹敵する液晶」と紹介されるほどだった。実用化のための省メモリ化などの改良を経て、この技術は2002年頃から大型の液晶テレビに搭載されるようになり、今では他社製を含むほとんどすべての液晶テレビに搭載されるまでに広がった。液晶自体の応答速度は改善されてきているが、さらなる高画質化に向けて2倍、4倍と書き換え速度向上が必要になっていること、立体表示には少なくとも2倍の高速化が必要であることから、今でもオーバードライブは不可欠な技術である。

2004年には、オーバードライブ技術のパイオニアとしての当社の貢献度が高く評価され、ディスプレイ関連では世界最大の国際学会であるSID(Society for Information Display)からSpecial Recognition Awardを受賞した。さらに2007年には市村産業賞貢献賞、2009年には全国発明表彰恩賜発明賞をそれぞれ受賞した。

全国発明表彰 恩賜発明賞
全国発明表彰 恩賜発明賞

市村産業賞貢献賞
市村産業賞貢献賞

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