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世界初の光トリガーサイリスター実系系統試験に成功

絶縁ゲート電源不要の光トリガーサイリスターは、
パワーエレクトロニクスのキーデバイス。

SL1500GX21の後継品の写真
写真はSL1500GX21の後継品

パワー半導体素子とは、電源やインバーターに使われるダイオードやトランジスターなどの半導体素子で、交流と直流の変換や電圧の昇降、周波数の変換などに使われる。当時の重電事業本部システム事業部の強い要請を受け、1972(昭和47)年に総合研究所(現:研究開発センター)の電子部品研究所で大電力GTO(ゲート制御でターンオフ可能なサイリスター)の本格的な開発が始まった。GTOについては既に1960年代に論文が発表され、1970年代初めには米国のGE、ウェスチングハウス、RCA各社が開発したものの期待した性能が出ずに縮小・撤退という状況で、国内でも多数の会社が取り組んだが、ことごとく開発に失敗していた。当社でも半導体事業本部で小型GTOを開発していたが、歩留まりが上がらずに終息する方針であった。このため、慎重論が支配的であったが、この大電力のGTOを利用した産業用、電鉄用の電力変換器で巻き返しを図りたいシステム事業部の強い要請があり、社長命令で事業部がスポンサーとなって新しいクリーンルームを設置し、半導体事業本部と協力して開発をスタートした。応用範囲の拡大を考えると、GTOのターンオフ電流を増やすことが最大の開発課題であった。1976(昭和51)年に、耐圧と電流定格の世界記録を大幅に更新し、1978(昭和53)年には耐圧を倍増した2,500V-600AのGTOを発表した。その後、4,500V-3,000AのGTOは新幹線のぞみや欧州高速鉄道の機関車にも採用され当社のパワーエレクトロニクス関連事業の発展に大きく貢献した。その頃、開発が進められた光トリガーサイリスターは、発光ダイオード(LED)でトリガーできるサイリスターである。電気でトリガーする従来のサイリスターに比べ、機器の小型化につながり、部品点数も削減できるので信頼性も向上する。周波数変換所や直流送電で利用される超高圧サイリスターバルブを完全に光トリガー化したいというシステム事業部の強い要請を受けて、1978(昭和53)年から開発がスタートした。既に4,000V-1,500Aの電気トリガーサイリスターは製品化されており、同じ電気特性を維持しつつ100倍近い光ゲート感度で汎用LEDをトリガーに使える大電力光トリガーサイリスターの開発は冒険であった。それだけに、90個もの4,000V-1,500Aの光トリガーサイリスターを直列接続したサイリスターバルブが、電源開発(株)佐久間周波数変換所で1983(昭和58)年12月から1985(昭和60)年2月までの実系統試験に世界で初めて成功した時の関係者の感激は大きかった。この素子を用いて直流送電ができることが実証されたのである。その一方で、大電力光トリガーサイリスター4,000V素子開発が一段落した1981(昭和56)年から、高出力LEDと高耐圧化の研究が始まった。

十数種類もの光ゲート構造の試作を経て、その課題を見事に解決する新型多段増幅光ゲート構造の開発に成功し、1982(昭和57)年に世界最大容量の8,000V-1,200A素子を東芝総合技術展に出展し、1984(昭和59)年には過電圧保護機能を集積化した8,000V素子を発表した。4,000V-1,500A素子は変電所などに設置される無効電力補償装置に広く使われ、6,000V-2,500A素子は、周波数変換所や直流送電に多く採用され、さらには、鉄鋼所のモータコントロール用コンバーターなどの産業用にも使われた。1990(平成2)年には半導体事業本部で6,000V-2,500A過電圧保護機能付き光トリガーサイリスターが開発された。

世界最大級の光トリガーサイリスター(SL-2500JX21)
世界最大級の光トリガーサイリスター(SL-2500JX21)

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