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世界初の高解像度電子スキャン型超音波診断装置

従来の製品から大きく解像度を向上させた
東芝独自の腹部用リニア電子スキャンと心臓用セクター電子スキャンの開発。

世界初の高解像度電子スキャン型超音波診断装置

超音波診断装置はプローブを体表に当て、超音波のビームで体内を走査し、体内臓器の断面を表示する装置である。プローブから出た超音波が内臓の各断層で反射してくる短い時間から距離を計算して画像データとして処理する。体内の動く臓器を画像データとして表示しようと、1971(昭和46)年に当時の総合研究所(現:研究開発センター)電子機器研究所で研究を開始した。

最初は胆石を簡単に描出することを目標に、胆嚢検査用のリニア電子スキャンの試作1号機を1975(昭和50)年に完成させた。しかし、実験用のスポンジの中空像は明瞭に描出されたものの、胆嚢はほとんど描写されない。プローブ内部の送受信センサや回路部品特性のばらつきが大きく、解像度を上げるシステム設計も不十分なことが分かり、製品化の難しさを痛感する出来事であった。その頃、他社が電子スキャン型超音波診断装置を販売し始め、一日も早い製品化を求められた。総合研究所としては独創的な研究を事業に結びつけるのが使命である。当社独自の方式を製品化することを目指し、背水の陣で臨むことにした。

先行した他社の製品は、医療診断に使用できるほどには画像が鮮明ではなかったため、他社にない高解像度の腹部用リニア電子スキャンを開発することにした。画質を落とす原因となるサイドローブを1/100に低減する「サブダイシング」、走査面内で超音波ビームを集束する「電子集束」、走査線密度を2倍にする「微小角セクター」、電極付き配列振動子を均一に製造する「一体化切断法」といった技術を盛り込んだ。また製品化を念頭に、部品や回路の特性を徹底的に調べ、すべてのチャネルで常に同じ性能が出ることを確認した。1976(昭和51)年に試作2号機が完成し、共同研究先の関東中央病院でテストした結果、胆嚢内で動く胆石や妊婦の体内で動く胎児など、当時は誰も見たことのない鮮明な画像が描出され、立ち会った医師から「感動でぶるぶる震えた」と言われた。同年8月の世界超音波医学会(サンフランシスコ)に出展、製品1号(SAL-10A)は注目を集め、米国内の病院を回ってデモを行い、驚異的な画質と高く評価された。その後、SAL-10Aを大幅に小型化して製品化したSAL-20Aは世界中に販売されて名機と言われ、米国スミソニアン博物館にも展示された。

超音波ビームの走査法には、腹部用のリニア走査の他に、肺と肋骨に囲まれた心臓を隙間から覗くように走査するセクタ走査がある。当社が腹部用のリニア走査の電子スキャンを開発した1976(昭和51)年に、他社が心臓用のセクター電子スキャンを製品化した。しかし、この製品には調整が必要な部分があり、完成品としては不十分であった。当社は単純で調整が必要ないセクター走査型超音波診断装置を開発することを基本方針に定め、開発をスタートした。鍵となる技術は、セクター走査に必要な可変遅延回路であった。部品グループの協力も得て試作したものの、回路が複雑で一旦は製品化を断念した。しかし、その後、高精度で構成がシンプルな「ROM制御遅延線」のアイデアが生まれ、1977(昭和52)年5月に装置が完成した。

リニア走査とセクター走査(電子スキャンでは、プローブを動かす代わりに電子的に超音波ビーム方向を制御する)
リニア走査とセクター走査(電子スキャンでは、プローブを動かす代わりに電子的に超音波ビーム方向を制御する)

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