世界初のマイコンによるデジタルコントローラー
デジタル制御が全産業の省エネ、公害防止、生産性向上に貢献。
1973(昭和48)年、当社は米国フォード社向けに自動車エンジン制御用12ビットのマイコン「TLCS-12」を開発した。0.1%の計測精度が要求されるプロセス制御など産業応用に最適で、しかもCPUや周辺LSIも整い、温度や湿度などの過酷な環境条件に耐える設計になっており、これまでの装置タイプの制御用コンピューターが手のひらに載ると技術者は驚喜した。
早速、産業用計測制御機器の応用開発プロジェクトを発足させ、1975(昭和50)年6月に従来のアナログ調節計にマイコンを組み込んだ世界初のデジタルコントローラー「TOSDIC™」の開発に成功した。
1970年代は日本産業の拡大期にあたり、鉄鋼、石油などの生産設備が大型化する一方、生産性向上、省エネ、公害防止などに対応した複雑なプラント運転が要求されるようになり、温度、流量など1点1点をアナログ調節計で制御するアナログ制御システムから、プロセスコンピューターによるデジタル制御への指向が強まった時期だった。デジタル制御では1台のコンピューターの故障がプラント全体に及ぶ恐れがあり、システムの信頼性と設備投資の経済性に課題を抱えていた。
当時のデジタルコントローラーは、マイコンを組み込んだコントロールステーションと最大8点の制御点を監視操作するループステーションで構成される分散型システムだった。運転員は従来のアナログ調節計と違和感なく監視操作ができ、信頼性においても経済性においてもアナログ制御システムを超える画期的な商品として産業界に受け入れられた。さらに、1979(昭和54)年にはおのおのループステーションにマイコンを組み込んだワンループコントローラーへと発展した。
デジタルコントローラーは各制御ループの制御性を改善したほか、複雑な多変数制御も容易に実行できた。特に、ボイラーや反応炉の燃焼制御においては、燃焼量がどのように変動しても空気、燃料の混合比を最適に維持できる「ダブルクロスリミット™燃焼制御方式」を開発実用化し、各プラントの公害防止と省エネと生産性向上に大きく寄与した。デジタルコントローラーシステムは、鉄鋼、石油化学、火力、上下水道やビル施設などほとんどの産業分野に適用され、その実績が高く評価され、1981(昭和56)年には毎日工業技術賞を受賞した。
1980年代には産業の多品種少量生産やフレキシブルオートメーションのニーズが強くなり、これに対応して、コンピューターCと、計装制御I、電気制御Eをいち早く融合し、新しくCIE統合制御システム「CIEMAC™」として発展させた。デジタルコントローラーで培ったマイクロエレクトロニクス技術、制御技術、情報・通信技術などによって圧延計測器、電磁流量計など計測制御機器も次々とマイコン化を進めることができた。
DINサイズワンループコントローラー
210Dシリーズ
CIE統合制御システムCIEMAC™
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