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重粒子線治療システム

治療の難しいがんに対応する先進医療

日本人の死因第1位を占めるがん。治療法のひとつとして重粒子線と呼ばれる種類の放射線を使う方法が注目されています。電力システム社新技術応用システム技術部の吉行先生に、重粒子線治療システムについてお話を伺いました。

重粒子線治療とは?

今月の先生 電力システム社 新技術応用システム技術部 吉行 健さん

ニャンダロー:がんは怖い病気というイメージがあるけど、最近は早期発見・治療で治る病気になってきたニャ。それでも治療の難しいがんには、重粒子線というものを使った方法があると聞いたけど、どんな治療なんだろう。

吉行先生:ニャンダロー君、よく知っているね。重粒子線治療は、体外から重粒子線と呼ばれる放射線をがんの病巣に照射して破壊する放射線治療の一種で、外科手術では取ることが難しい場所のがんや、体の深いところにあるがんの治療に有効なんだ。従来のX線やガンマ線などの放射線は、体の近いところでエネルギーが高く、体の奥に行くにつれ威力が落ちていく。だから体の深いところのがん細胞を破壊しようとすると、手前にある正常な細胞にもダメージを与えてしまうことが避けられなかったんだ。
しかし、重粒子線は体の表面ではエネルギーが低く、ある深さに達すると威力が最高になるという特徴があるんだ。その深さをがん細胞の位置に合わせて調整することで、正常な細胞へのダメージを少なくしながら、がん細胞だけを破壊することができるんだよ(図1)。

図1:X線と重粒子線、エネルギーを比較すると…?

ニャ:まるでSF映画のレーザービームみたいだニャ。そもそも重粒子線というのは一体どんなものなんですか?

先生:重粒子線というのは、電子よりも重い粒子(物質を構成する原子・分子などの粒)を高速にしたもの。重粒子を加速することで、その粒子にエネルギーを与えることができるんだ。ちなみに、がん治療には炭素原子核で作られた重粒子線が使われているよ。

細いビームでがん細胞をやっつける

放医研に設置されたシステムの照射装置

先生:さっきレーザービームと言っていたけど、実際、東芝のシステムでは、重粒子線を細いペンシル状に絞ったビームにして照射し、がん細胞をペンで塗りつぶすようにして破壊する「3次元スキャニング法」という照射がおこなわれていてね、昨年から、千葉県の放射線医学総合研究所(放医研)の新治療研究棟でその治療が始まっているんだ。
一般的な放射線治療では、正常な細胞へのダメージを抑えるため、がん細胞の形に合わせてくりぬかれたコリメーターと言われる真ちゅう製の遮へい物を通して放射線を照射するので、遮られた部分の放射線はエネルギーをロスしていることになる。しかし、この3次元スキャニング法では、照射されたビームのほとんどが、がん細胞に当たるので、エネルギーの損失が少なく効率的に治療できるんだよ(図2)。

図2:エネルギーロスを最小限にする照射法

ニャ:治療にかかる時間はどのくらいですか?

先生:1回の照射は2〜3分で、治療室に入っている時間も15分くらい。もちろん、治療する部位や場所によって違うけど、とても短い時間だね。

普及に向けて小型化が進んでいます

ニャ:重粒子線治療は、どこで受けられるのかニャ?

先生:日本では、世界初の医療専用施設として稼働した千葉県の放医研のほか、群馬県と兵庫県のあわせて3カ所で治療を行っているよ。

ニャ:ニャッ! たった3カ所ニャの?

先生:重粒子線治療は、がんを破壊するために重粒子線のスピードを光の速度の70%くらいまで加速する必要があって、そのためには巨大な加速器が必要なんだ。1993年に完成した放医研の場合、システム全体が収まっている施設は、120m×65mで、ほぼサッカー場と同じ大きさだからね(図3)。それだけの施設をあちこちにつくることは難しいよね。

図3:重粒子線治療システムはサッカー場と同じ大きさ!

ニャ:なかなか簡単には治療を受けられないんですね。

先生:ただし、この装置も小型化が可能になって、最新の技術では設置面積を1/3くらいまで小さくできるようになったんだ。※今度建設される神奈川県立がんセンターにも、小型化された装置に東芝の最新技術が導入されるんだよ。がんの治療は日進月歩。部位や症状で有効な治療法も異なるから、重粒子線だけが有効な治療というわけではないけれども、重粒子線治療の特性に合った病状の患者さんが、少しでも多く治療を受けられるようになるといいね。

ニャ:早期発見のための定期検査と、きちんとした生活で予防に努めることも大切だニャ。先生ありがとうございました。

平成25年11月開院予定
資料協力:独立行政法人 放射線医学総合研究所

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