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日本初の量産化された超電導マグネット

液体ヘリウムの極低温容器の断熱技術の工夫や
漏洩磁束を極小化して量産化を実現。

日本初の量産化された超電導マグネット

医療用に開発されたMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムは、磁気共鳴現象を利用して人体の断層画像を撮影する技術である。MRIの実用化には、コンピューター画像処理技術と超電導マグネットの2つがキーテクノロジーとして寄与している。MRI用超電導マグネットについては、大空間に強磁場を発生させ、診察対象となる領域に100万分の1(ppm)オーダーの高精度な磁場均一性を実現するための高度なコイルの製作技術を開発した。また、病院に設置するために、漏洩磁束を極小化する高度な磁気シールド技術が求められた。

このほか、極低温容器の断熱技術の工夫や小型冷凍機の搭載により、液体ヘリウムも半年以上にわたって補充を必要としないようにした。さらに、電源と切り離した状態でも磁場減衰をほとんどゼロとするために、超電導の低抵抗接続(10-12Ω)の実現や永久電流スイッチを開発した。このような周辺技術の開発と統合により、1985(昭和60)年にMRI用超電導マグネットを実現した。

当社の京浜事業所は、現在の東芝メディカルシステム社の依頼を受け、磁束密度が0.5T(テスラ)と1.5Tという強磁界のMRI用超電導マグネットを業界に先駆けて市場に投入した。しかし、1985(昭和60)年のプラザ合意に始まる円高と、1990年代初頭の日米貿易摩擦を受けて、アメリカ製品の導入促進政策の実施など市場環境の急激な変化があり、コストダウンが急務の課題となった。この対応のため、当社は、設計改善や調達部品のコストダウン、流し組立による省力化などを実施した。現在、MRIは、全世界で年間3,000台以上の製造が行われており、身近な医療診断装置となっている。また最近は性能も飛躍的に向上し、短時間で鮮明な診断画像が得られるようになった。

これと同時に、単結晶引き上げ用の超電導マグネットも開発した。半導体は、純度の高い単結晶のシリコンウェハー上にサブミクロンの加工をして作られる。シリコン単結晶の製造には、多結晶シリコンを石英製のるつぼに入れ、加熱溶融して、種結晶から単結晶を成長させる方法がとられている。シリコン単結晶の大口径化が進むにつれて、るつぼ内でのシリコン融液の対流が大きくなって、単結晶の品質に影響を及ぼすという問題が生じてきた。これに対処するため、1980(昭和55)年ごろから、シリコン融液に静磁界を加えることで対流を抑える方法について研究が始まり、この静磁界を発生させるため超電導マグネットが使われることになった。ここで必要な中心の磁界の強さ(磁束密度)は0.4〜0.5T程度であるが、ユーザーの使い勝手や周辺設備との協調性を考慮して、容器を「コの字」形としてコンパクトにし、コイル含浸用のエポキシ樹脂を高熱伝導性のものに改良するなど、設計上・製造上の様々な工夫を凝らした。

その結果、1990年代の初頭には8インチ(200mm口径)の単結晶製造ラインへ適用されるようになり、2000(平成12)年の初頭には、この技術により12インチ(300mm口径)の単結晶の製造も可能となった。

流し組立によるMRIの量産製造
流し組立によるMRIの量産製造

12インチシリコン単結晶引き上げ用 超電導マグネット
12インチシリコン単結晶引き上げ用 超電導マグネット

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