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世界初のノンラッチアップIGBT

絶縁ゲート・バイポーラートランジスター(IGBT)の開発中に
逆転の発想でラッチアップ(素子破壊)を防いだ。

世界初のノンラッチアップIGBTの画像

パワー半導体素子は電力変換素子として広範囲な応用分野でエレクトロニクスを支える柱の一つである。当社は、大電力ゲートターンオフサイリスター(GTO)の開発に1970年代初めに着手したが、その後実用化を阻んでいた原因がターンオフ時の電流集中であることを突き止め、これを回避する素子を開発し、1977(昭和52)年に1.3kV-600A素子を製品化した。さらに1979(昭和54)年に、大阪市交通局向けにGTOサイリスターを使用した日本初の電車用VVVFインバーターを納入した。その後、電鉄用だけでなく産業用交流モーター可変速制御や大電力インバーター電源の実用化時代を開いた。1970年代後半には、大電力サイリスターを直接光トリガーする研究にも着手し、1981(昭和56)年に高出力LEDを光源とする素子を製品化した。

1980年代前半は、ジャイアントトランジスター(GTR)やゲートターンオフサイリスター(GTO)の出現によってインバーター技術が著しく進歩し、家庭用のインバーター・エアコンも登場した。さらに、エレベーターや電車などモーター駆動に代表される電力変換装置の電力スイッチング素子は、ますます高性能・高信頼化が求められた。特にスイッチング速度は、装置の低騒音化、精度向上、小型化の要求から、可聴周波数を超える領域までの動作が求められた。従来、高速スイッチング素子としては、MOSFETがあるが、大電流、高耐圧化が困難で、AC200V程度の小容量装置への適用に限定されていた。

この頃、世界中のメーカーが新デバイスの開発を競っており、1982(昭和57)年に米国GE社から縦型NチャンネルMOSのドレイン側にP層が付加されドレイン層が伝導変調されるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)構造が発表された。しかしGE社のIGBT構造は寄生サイリスターを内蔵しており、そのラッチアップのために寄生 サイリ スター がオンになってしまい大電流は切れない構造上の問題で実用化は困難であった。その頃、当社の総合研究所(現:研究開発センター)では、このGE社のIGBT構造がバイポーラGTRを置き換えられる有望な素子であることに着目し研究を始めた。早速、2次元のデバイスシミュレーターで計算し、その結果と比較したところ、当時パワーMOSで主流となっていたメッシュ構造のパターンをやめ、単純なストライプパターンのマスクを描くと、思いがけずラッチアップ防止の有力技術の発見につながった。さらに、MOS部の飽和電流を素子がラッチアップする電流以下に設定することを思いついた。これによって初めてノンラッチアップ構造のIGBTが大電流を切ることができる実用的な素子であることを実証でき、量産化へとつながった。1984(昭和59)年、当社は新規素子構造を採用した破壊に強いノンラッチアップ構造のIGBTを開発し、半導体国際会議(IEDM)で発表するとともに、翌年の1985(昭和60)年に製品を発表した。世界に先駆けて開発したことによってIR-100、大河内記念技術賞を受賞するとともに、2010(平成22)年には(一社)電気学会より「でんきの礎」でも顕彰された。

大河内記念技術賞メダル(1990年)
大河内記念技術賞メダル(1990年)

第3回電気技術顕彰「でんきの礎」受賞(2010年)
第3回電気技術顕彰「でんきの礎」受賞(2010年)

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