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世界初のテレビ受像機用SAWデバイス

LCフィルターの性能を凌駕するも、どこも実用化に悪戦苦闘。
単結晶の育成技術、独創的なフィルター設計が道を開いた

世界初のテレビ受像機用SAWデバイスの画像

弾性表面波(Surface Acoustic Wave;以下SAW)デバイスとは、圧電性基板の上に金属薄膜のすだれ状電極(Interdigital Transducer;以下IDT)と反射パターンが形成された構造で、特定の周波数の電気信号を選択的に取り出すフィルターなどとして使われている。SAWは固体表面を伝搬する機械的振動の波で、圧電性基板の表面に金属薄膜の線状の電極を形成することで、電気信号とSAWのエネルギー変換ができる。また、高周波領域でも基板上の伝搬損失が少なく、その一方で表面状態が極めて敏感なため反射用電極が形成されて容易に反射が生じる。SAWデバイスは、IDTでのエネルギー変換と反射用電極でのSAWの共振現象によって、電気→機械振動→電気のエネルギー変換効率が周波数によって異なる性質を利用したものである。

当社は、1977(昭和52)年に世界に先駆け、テレビ受信機の中間周波フィルター用として、SAWフィルターの量産を開始した。量産化に当たってのポイントは、SAW用圧電結晶としてのタンタル酸リチウム(LiTaO3)単結晶の育成、加工技術の確立や結晶カット角の発見と、フィルターの振幅の位相特性が厳密に得られるくし形状電極設計技術の開発であった。厳密な周波数特性を得るために、SAWに乱れを与える要因を解明し、特性劣化を周波数領域で補正する方法を考案して、高効率で短時間の自動設計を可能にした。さらに、SAWの共振現象を利用した発振子や低損失高周波フィルターを業界に先駆けて量産化し、VTR変調回路のIC化やポケットベルの回路簡素化に貢献した。その後の移動体通信機器の高周波化、軽薄短小化に対応してSAWフィルターの開発を進め、現在では携帯電話のキー部品の一つとなっている。

SAWデバイスの発展を支えた当社の主な技術として、IDT内に反射用の電極を配置した電極構造にすることで一方向にだけSAWを伝搬させて低損失化を図ったこと、反射電極の間に複数のIDTを配置し共振の高次モードを結合させ広帯域化を図るモード多重化フィルター構成を考案し、フィルターの低損失、広帯域化を図ったことが挙げられる。さらに、フィルターの中心周波数はIDT電極線の間隔で決定されるため、高周波化するにはIDTの微細加工技術が重要となった。半導体プロセスのドライエッチング技術を利用し、量産レベルでは線幅0.4μm、周波数で2.5GHzまで可能となった。これは、世界標準である第三世代携帯電話(W-CDMAなど)や無線端末(Bluetooth)に割り当てられている周波数帯をカバーしている。

当社は1パッケージに2フィルターチップを入れたデュアルフィルターやフェイスダウンボンディング(FDB)をベースに、市場から強く求められた薄型化を進めて、よりチップサイズに近づけたCSP(Chip Scale Packaging)の開発も行った。また、近年デジタルテレビ放送がメディアを大きく変えて、通信と放送の境界がなくなっている。そのため、携帯電話、モバイルパソコン、無線端末にテレビチューナーの機能を搭載し、SAWデバイスの特長である、急峻な周波数特性と小型・薄型化構造により、セットの高性能化と小型・軽量化に貢献している。

テレビ受信機(18T32)の中間周波フィルター用として使われた
テレビ受信機(18T32)の
中間周波フィルター用として使われた

タンタル酸リチウム単結晶とSAWフィルタ
タンタル酸リチウム単結晶とSAWフィルタ

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