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世界初のへリカルスキャン方式VTR

世界中の数億台のVTRに使われている
「ヘリカルスキャン方式」で、80年代の日本経済発展に貢献。

写真はヘリカルスキャンVTR(放送局用)
写真はヘリカルスキャンVTR(放送局用)

1953(昭和28)年に日本で白黒テレビ放送が始まり、ライブ放送以外は映像信号を電子的に記録・再生する機器が必要になった。その当時は映画フィルムに記録し、再生時はフィルム映像を電気信号に変えて使用していた。音声信号の記録は、オープンリールの磁気記録方式が商品化されたが、映像信号は音声の100倍もの信号帯域での記録が必要となり、テープ走行速度を19m/秒まで上げなければならない。しかし映像信号を映画フィルムに記録再生するには、長い処理時間と大きなコストがかかることから、磁気記録方式への期待が高まっていた。

米国のRCA、英国のBBC研究所はテープスピードを毎秒数メートルに上げて対応した。また、米国の俳優ビング・クロスビーが私財を投じ、映像信号を時分割し10個のトラックに同時記録する録画装置を作った。これらの実験で、テープと磁気ヘッドの相対速度を2桁向上できれば、映像信号を磁気記録できることがわかり、回転ヘッドの考え方が生まれた。

2インチ幅テープの幅方向に90度間隔で取り付けられた4個の回転ヘッドを使い、それぞれ4分の1だけ記録再生する4ヘッド録画方式は、1956(昭和31)年に米国のアンペックス社が発明し、実用機開発に成功した。

しかし、4個のヘッドからの1個の信号をつなぎ合わせて1画面を作るため、ヘッドの特性差により色ムラの発生や、つなぎ目が目立つ欠点があり、当社は1954(昭和29)年から斜め回転ヘッドを使った記録方式の研究に取り組んだ。2インチ幅テープに斜めに長いトラックを形成すると、1画面を1つのヘッドで1本のトラックに継ぎ目のない記録が可能になる。このヘリカルスキャン方式は、マツダ研究所澤崎憲一博士の発明である。

常にヘッドがテープに接触している状態で安定的に走行させるのは非常に難しい。実験を重ね1959(昭和34)年9月に実験機(当社製VTR1号機)を公開すると、世界中で注目を浴び、ロサンゼルスのアンバサダーホテルで行われた米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)の招待講演で発表し大きな反響を得られた。放送用VTRは互換性の問題があり、標準方式としてアンペックス社の4ヘッド方式が採用されたが、工業用VTRには製造コストが1/10以下というメリットがあって、当社のヘリカルスキャン方式が採用された。1969(昭和44)年には標準化されたオープンリールの統一I型VTRが開発され、ヘリカルスキャン方式VTRが民生用に商品化された。その後、カセット化されたβ(ベータ)方式、VHS方式の家庭用ビデオにもこの方式が採用された。世界中で数億台のVTRに使われ、放送用もすべてへリカルスキャン方式が使われている。このヘリカルスキャン方式VTRは、世界に通用する技術として高く評価され、1980年代の日本経済の発展に大きく貢献した。

ヘリカルスキャンVTR(白黒)澤崎博士
ヘリカルスキャンVTR(白黒)澤崎博士

統一 I 型VTR
統一 I 型VTR

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